資産形成のレビュー

すべての納税者を税務上公平に取り扱うために、会社の特殊性に配慮するよりはどこの会社にも適用できるルールが必要となる結果、会社が適正決算のために計上した費用であっても、税務上債務が確定していない費用は原則として計上を認めません。
ただし、売上原価については、収益費用対応が原則ですから、この債務確定基準の適用対象外となっています。
それでは、この基準を具体的にみてみましょう。
 税務の通達では、債務が確定している状態を判定する要素として次の三つの基準をあげています。
 当該費用について法律上支払う契約があること=これは、相手方から物品の納入やサービスの提供を受けるのに対して、こちらは代金を支払うという契約が成立(存在)していることがまず必要という意味です。
 期末までに当方の支払義務が発生していること=これは、相手方から物品の納入やサービスの提供をすでに受けた場合には、こちらの支払義務が確定します。
 金額の見積もりが合理的であること=通常、前段階で金額は確定していますが、実際には金額が確定していない場合もあるので、見積計算を認めています。
しかし、この見積もりは単純な概算計算ではなく、金額算出過程が合理的であること、個別具体的に立証可能であることを要求しています。
というのは、この段階で相手先から請求書が出ていないということは通常では考えにくい  からです。
 税法も法律である以上、法律適用にあたっては、ある事象が法律の要件に該当するかについて事実の認定が必要となります。
逆にいえばある事実がどの条文に該当するかを判断するのが「事実認定」となります。
たとえば、得意先に対する売掛金が滞っていたとしましょう。
この事実が税務上の貸倒損失に該当するのか、単なる回収の遅れなのかまたは得意先との商品トラブルで遅延しているのか、また得意先の一時的な資金繰りが原因なのか得意先が一家離散している状態なのか判断が必要となります。
この判断には法律的視点からだけでなく経済的視点(実態的)からの分析も必要となります。
また、この判断には合理的な資料も必要となります。
 このように、税法の知識を得るだけでは不十分で、事実をどう判断するかまたそれを第三者にも説明できる資料の作成がポイントであることがわかります。
 これは、法人が税法の定めに従って一定の帳簿書類を備え、あらかじめ税務署に青色申告の承認申請を提出した場合に認められるもので、法人は青色の申告書を提出します。
青色申告でない申告は白色申告と呼びます。
承認申請は原則、適用を受けようとする事業年度の開始日の前日までに提出しなくてはなりません。
なお、設立第一期の場合は前事業年度がないので、設立の日以後三ヵ月を経過した日と設立後最初の事業年度終了の日のいずれか早い日までに提出しなくては認められず、遅れると設立第二期から適用となります。
 青色申告の特典は、欠損金の繰越控除、欠損金の繰戻還付、特別償却・割増償却、諸準備金、各種税額控除・所得控除が主な内容ですが、そのほかにもさまざまな税の恩典はすべて青色申告を要件としています。
 この青色申告は、確定申告書を申告期限までに提出しなかった場合、帳簿書類が不適切な場合、帳簿書類に隠蔽・仮装があった場合などでは、その事実があった事業年度にさかのぼって取り消されるルールになっています。
特に悪質ケースは当然そうなるでしょう。
 法人税対策を考えるには、会社の青色申告提出が最低限の条件です。
 ビジネスマンからの質問の一つに、会社決算では黒字なのに法人税をほとんど納めていない会社、逆に赤字決算でも多額の法人税を納めている会社があるのはどうしてか、というのがあります。
素朴な質問とはいえ、これはまさに法人税計算の本質をついた質問といえます。
簡単に説明すると、法人税額を計算するもととなる「課税所得金額」が会社決算書の「当期利益」ではないことに原因があります。
会社決算の目的は、事業年度の業績を示すことです。
また、株主への配当額を決める会社利益を計算することにあります。
そこで決算書の利益は会計原則、商法に従い計算されますが、会社の業態・事業計画等その企業の個別事情や経営者の判断を決算上取り入れる裁量の余地が、ある程度残されています。
 これに対し法人税法は、「租税法律主義」を反映して、すべての会社の利益に公平に課税することを第一の目的として、画一的ルールにより税の対象となる「所得金額」を計算します。
さらに、国の経済政策(たとえばハイテク産業を援助する政策)や社会政策(たとえば交際費を抑制する課税目的)から随時ルールが追加されたり、廃止されたりします。
 決算書利益は収益マイナス費用ですが、法人税法は決算書と区別するため益金と損金を定め、各事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額を「所得金額」としています。
収益・費用と益金・損金は一致していることが多いのですが、決算書利益から所得金額を算定するには税務上の修正が必要です。
たとえば、受取配当は決算書上は収益ですが、税務上は益金ではないので当期利益から一部または全部減算(益金不算入)します。
逆に、交際費は決算書上は費用ですが税務上は損金と認められないので当期利益に加算(損金不算入)します。
こうして当期利益から税務調整(これを申告調整という)を経て所得金額を求めることができます。
この「所得金額」に対して一定の法人税率が適用され、法人税額が算定されることになるわけです。
ここまでくると最初の質問に答えられるでしょう。
黒字なのに法人税を納めていないのは「収益」はあっても「所得金額」がないからです(このほかに税金そのものをマイナスしてくれる税額控除の制度もあります)。
赤字決算の場合は逆のことがいえます。
もっとも、わが国の決算では確定決算主義のため、法人税の規定が会計実務に広く取り入れられ、また新規事象については税務・会計が相互に影響しあい取り扱いが異なる領域はますます狭くなっています。
会計と税務でコンセプトがまったく異なるものの代表例は、交際費、寄付金、役員賞与の損金不算入と受取配当の益金不算入でしょう。
 伝家の宝刀とは、そうみだりに使うものではなく、最後の手段として一刀両断するために抜かれるものです。
ここで宝刀とは、税務当局(場合によっては裁判所)が、複雑な手口を使って法人税逃れをしようとするのをくい止めるために下す判断のよりどころをさします。
以下、この伝家の宝刀について説明しましょう。
 現代は契約社会といわれ、企業はすべて法律にのっとって活動しています。
法人税法も、会社の「所得金額」を算出するのに、こうした法律形式を重要な判断基準としています。
しかし、時にはこの法形式を悪用して、法人税を免れようとする者がいるので、これを防止することが必要となります。
 実質課税の原則は、それ自体法律に明文化されてはいませんが(法人税法一一条は部分的なもの)、税法を解釈適用する際に、法形式と実質が相反するときは実質を優先させるという原則です。
そして、この精神は税法の基本として尊重され、裁判例にもあらわれています。
 同族会社の行為計算の否認規定は、実質課税の原則を同族会社に適用した規定です。
同族会社の取引がどんなに合法的な取引でも、結果として法人税を不当に減少させる場合は、その取引を税務上は認めないというものです(法人税法一三二条)。
日本の会社総数の九割を超えるといわれる同族会社にとって大変厳しい条文で、いかなる場合にもこの条文の示す「実質優先の精神」を忘れてはいけません。
 
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